カメラにはセンサーがあり、中判・フルサイズ・APS-C・マイクロフォーサーズなどと大きさだけでもさまざまな選択肢があります。
しかし、自分はどれを選べばいいのか、カメラに触れたことがない人にとっては判断が難しいものです。そこで今回は、フルサイズ・APS-C・マイクロフォーサーズに焦点を当てて、それぞれのメリット・デメリット、最適な使用環境、取り扱いメーカーを一気に比較していきます。
自分に最適なセンサーサイズを見つけたい人必見の内容です。
この記事で学べること・センサーサイズごとの特性と弱点
・初心者へおすすめのカメラ
センサーサイズが違うと何が変わる?自分に最適なセンサーサイズの選び方
非常に当たり前なアドバイスになってはしまいますが、私の考えるセンサーサイズ選択の重要なポイントは以下の4つです。
- 撮影環境
- 被写体
- 携帯環境
- 予算
撮影環境・被写体
どんな時間に多く使いたいかによって最適なセンサーサイズは変化します。
基本的にはセンサーは大きいほど暗い場所でもノイズを少なく撮影することができたり(高感度耐性)、より色の変化などを滑らかに変化させることができます(色諧調)。もし星景や夜景を撮影したい場合はフルサイズがベスト、フルサイズが厳しければAPS-Cといった具合です。
逆に後で詳しく説明しますが、センサーサイズは小さいほど実質の焦点距離が大きくなる(35mm換算)ので、航空機や動物撮影などで超超望遠を頻繁に使いたいという場合には、マイクロフォーサーズがベスト、予算が許すならフルサイズといった具合になります。
※超望遠は100mm以上離れた被写体を撮りたい時など。
極端な例ですが、以下のようなクラスだと最低でも100万円からスタートとなります。
つまり、自分がどのような環境で、どんなものを撮影したいかによって最適なセンサーサイズは変化するというわけです。
とはいえ、カメラを持っていない段階で何を撮りたいのかなんてわからないよというのが大多数だと思いますし、カメラを買ってから撮りたいものが変わっていくと思うので、以下の点も基準に考えてみてください。
携帯環境
「結局スマホでいいや」というのが最悪のシナリオ。これを回避するためにも重要視すべきは自分がそのカメラを持ち歩けるかどうか。
センサーサイズは物理的な大きさの差なので、当然ボディーそのものの大きさや重量、レンズのサイズに影響します。つまり、フルサイズほどデカく・重く、マイクロフォーサーズほどコンパクトで軽くなる傾向があります。
ボディーのみ具体的に比較してみるとこんな感じ。(両者共に比較的コンパクトなものを選択しています)
OLYMPUS PEN E-P7 | Canon EOSRP | |
---|---|---|
サイズ | 118.3(幅)× 68.5(高さ)× 38.1(奥行)mm | 132.5(幅)×85.0(高さ)×70.0(奥行)mm |
重量 | 337g(電池・メモリーカード含む) 289g(本体のみ) | 約485g(バッテリー・カードを含む) 約440g(本体のみ) |
150gくらいの差ならと思うかもしれませんが、この重量に+αでレンズの重量があるので、大きな違いが生じます。
試しに同様の焦点距離とF値のレンズの大きさの差はこのようになっています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO | RF50mm F1.2 L USM | |
---|---|---|
最大径×長さ | Ø70 x 87mm | φ89.8×108mm |
重量 | 410g | 950g |
35mm換算ではマイクロフォーサーズは2倍、APS-Cでは1.5倍(Canon機は1.6倍)することで比較可能な値になります。
ご覧の通り、写りの良いレンズにしようとすればするほど、大きさや重量の差は顕著になります。
もちろん、携帯性を重視した焦点距離が固定の単焦点のレンズもあるので、写りにそこまで頓着しないのであれば、以下のようなコンパクトなレンズもフルサイズには存在します。撒き餌レンズなどと呼ばれます。
予算
ここはサラッとの紹介にしますが、基本的にセンサーサイズと価格は比例します。肌感覚になりますが一般的なおおよそ価格帯は以下のようなものだと思ってください。
フルサイズ | APS-C | マイクロフォーサーズ | |
---|---|---|---|
ボディー | 15-80万 | 9-20万 | 5-20万 |
レンズ | 5-40万 | 3-10万 | 2-20万 |
なぜAPS-Cよりもマイクロフォーサーズの方が価格帯の上限が高いのかというと、APS-C機はマウントがフルサイズ機と共有の場合があり、フルサイズ用のレンズがAPS-C機と共通で使えます。つまり、わざわざAPS-Cだけでしか使えないレンズを作る必要がなく、数が少ない傾向にあります。
その点マイクロフォーサーズはマイクロフォーサーズ専用に作られている場合、コンパクトで性能の良いレンズがあり、上限が高くなっています。
フルサイズ・APS-C・マイクロフォーサーズの特徴と弱点
フルサイズの特徴
- 高画質
- 低ノイズ
- ダイナミックレンジ広さ
高画質
フルサイズセンサーは、広い面積を持つため、より多くの光を捉えることができます。その結果、高い解像度と優れた画質の写真が撮れます。
例えば以下の画像のようにセンサーを25分割した場合、センサーの1ピクセルの大きさは当然センサーサイズが大きい方が、より面積が大きくなります。
低ノイズ
センサーサイズが大きいため、画像のノイズレベルが低くなります。特に高感度の撮影や暗所での撮影において優れた性能を発揮します。
受光面積が大きいほど、ノイズを抑え高画質な映像を生み出せる傾向にあるため、十分に光量を確保できない環境ではセンサーサイズが大きいほど有利になります。
ダイナミックレンジの広さ
フルサイズセンサーは、広いダイナミックレンジを持つため、明暗のコントラストが大きいシーンでも細かい階調を再現できます。
ダイナミックレンジ(ラチチュード)とは、暗いところから明るいところまで肉眼で見たように、表現可能になります。
ちなみに単位は「14+ストップ、16+ストップ」などと表現されます。
フルサイズセンサーの弱点
- サイズと重量
- コスト
サイズと重量
フルサイズセンサーは大きく、それに合わせた大型のカメラボディやレンズが必要となるため、一般的に重くなります。持ち運びや旅行などの場面での利便性には欠けることがあります。
コスト
フルサイズセンサーカメラは一般的に高価です。高品質のセンサーと大型の光学系を備えたカメラボディやレンズには、それに見合った費用がかかります。
一般的にはフルサイズ一択?
一般的にはフルサイズが一番いいとされる傾向にあります。その理由の詳細は書くと長くなるので重複する内容もあると思いますが、こちらの記事をご覧ください。
結論としては、自分の使用目的がはっきりしていればセンサーサイズなんてなんでもいいです。
APS-Cセンサーの特徴
- コンパクト
- 安価
コンパクト
APS-Cセンサーカメラは一般的に小型で軽量です。持ち運びや旅行などの際に便利です。
ボディーそのものは大差ないかもしれないですが、レンズの大きさが全く異なります。
安価
フルサイズセンサーカメラに比べて、APS-Cセンサーカメラは一般的に予算に入手しやすい価格帯です。
フルサイズセンサーのカメラはピンキリで10-100万円くらいの幅がありますが、APS-Cセンサーのカメラは10-30万円の間に収まっている場合がほとんどです。
ただミラーレスへのシフトで価格差が若干少なくなってきているような気もするので、一概には安価とは言えないかもです。
APS-Cセンサーの弱点
- 画質の制約:ノイズ
- 被写界深度が深め
画質の制約:ノイズ
センサーの面積が小さいため、画質でフルサイズセンサーに劣ることがあります。特に高感度時のノイズレベルやダイナミックレンジの制約があります。
被写界深度が深め
被写界深度とはボケ感のことを意味します。
センサーが小さいため、同じ絞り値を使用しても、APS-Cセンサーカメラでは被写界深度がフルサイズに比べて深くなります。
条件を整えた場合、ボケ感はセンサーサイズが大きいほど強くなります。この理由については、なぜAPS-Cよりもフルサイズの方がボケにくいのかというテーマでこちらの記事で解説しています。
マイクロフォーサーズセンサーの特徴
- 小型・軽量
- カメラの形状の柔軟性
- 焦点距離拡大の効果
- 黒レベル
小型・軽量
マイクロフォーサーズセンサーカメラは、小型のセンサーサイズを採用しており、その結果、カメラボディとレンズがコンパクトで軽量になります。持ち運びや旅行に最適です。
カメラの形状の柔軟性
マイクロフォーサーズは一眼だけでなく、コンパクトデジタルカメラでも多く採用されています。
そのため一眼の形状だけでなく、コンデジの形などさまざまなのでポケットに入れて持ち運びたいなどの携帯性重視で考えている方にはおすすめなセンサーではあります。
焦点距離拡大の効果
マイクロフォーサーズのセンサーカメラでは、レンズの焦点距離がフルサイズに比べて倍率がかかるため、望遠撮影に適しています。
先ほどの説明したように、マイクロフォーサーズは2倍、APS-Cは1.5倍(Canon機は1.6倍)する必要があるため、実質焦点距離が長くなるため、望遠を使う方はセンサーは小さい方が出費を抑えることが可能です。
マイクロフォーサーズセンサーの弱点
- 画質の制約
マイクロフォーサーズセンサーは、フルサイズセンサーやAPS-Cに比べて面積が小さいため、画質面で制約があります。特に高感度時のノイズレベルやダイナミックレンジに影響が出ることがあります。
RAW撮影の場合、フルサイズ機は14Bitや16Bitです。しかし、マイクロフォーサーズでは12bit(2の12乗)の場合があり、基本的にセンサーサイズが小さい分、色の滑らかさ・明暗の変化の滑らかさなどが劣る可能性があります。
以上のような特徴と弱点はあり、用途によっては逆転する内容となりますが、一般的にはこのように言われています。
センサーサイズごと、どのような用途に使いたい人が適しているのか具体例を挙げておきます。
センサーサイズごとに最適な人物像
フルサイズが最適な人
- 高画質と優れたダイナミックレンジを求めるカメラユーザーにとって、フルサイズセンサーは理想的です。ポートレート、風景、スタジオ撮影など、幅広いジャンルの撮影に使用されため、自分が何を撮影したいのかわからない人はフルサイズにしておくと後で後悔が少なくなります。
- 高品質なプリントや大判プリントを必要とする人は、フルサイズセンサーの高解像度と詳細な画像表現は、大きな印刷物やクロップなしのトリミングに適しています。
APS-Cが最適な人
- APS-Cセンサーカメラは、予算に制約がある場合でも高画質な写真を撮影できる優れた選択肢です。こちらもフルサイズ同様に風景、ポートレート、スポーツなど、さまざまな撮影シーンで使用されますが、暗所での撮影ではフルサイズに劣るために、ある程度光量が確保できる環境で使う機会が多い人にとってはベストな選択肢となります。
- 望遠撮影を好む野生動物やスポーツ写真には、APS-Cセンサーカメラの望遠レンズの焦点距離を実質的に延長する効果は、より被写体に近づくことができるようになるためかなり便利なものです。このような写真を撮影する人にとってはAPS-C機がおすすめです。
マイクロフォーサーズが最適な人
- 旅行者やストリートフォトグラファー: マイクロフォーサーズセンサーカメラは、小型で軽量な設計が特徴であり、持ち運びや旅行に便利です。ストリート写真や旅先の風景など、アクティブな撮影スタイルに適しています。
- ビデオクリエイター: マイクロフォーサーズセンサーカメラは、ビデオ撮影にも優れた選択肢です。被写界深度が深い傾向にあるためピントが広く合って欲しい場面やスタジオや日中の撮影などで光が充分に入る環境では最適です。
よく一般的に初心者なら安いのから買っておけばいいじゃないかと言われることもあるかもしれませんが、それは大きな後悔を生むことになります。ちゃんと自分の撮影ニーズと予算に合ったカメラを選ぶことが最も重要です。
メーカーごとのラインナップの違い
各メーカーそれぞれが、全てのセンサーサイズのカメラを展開させているわけではなく、それぞれ差別化のために主力としているフォーマットは異なります。
一般的なユーザーが手に取る可能性が高いメーカーを並べました。
1型(13.2×8.8mm)はマイクロフォーサーズと1/2.3型の間の大きさです。
リンクはそれぞれのメーカーのサイトにつながっています。各社それぞれのカテゴライズの仕方があったので、リンクの位置が異なりますがご了承ください。
Canon
系譜 | |
フルサイズ | Rシリーズ(ミラーレス機)ex.EOS R3 Dシリーズ(レフ機)ex.EOS 6D MarkII |
APS-C | Kissシリーズ(一眼:初心者向け)ex.EOS KissX10 Rシリーズ(ミラーレス機)ex.EOS R10 Dシリーズ(レフ機)ex.EOS 90D PowerShotシリーズ(コンデジ)ex.G1 X Mark III |
1.0型 | PowerShotシリーズ(コンデジ)ex.G5 X Mark II |
Nikon
系譜 | |
フルサイズ | Zシリーズ(ミラーレス機)ex.Z9 Dシリーズ(レフ機)ex.D6 |
APS-C | Zシリーズ(ミラーレス機)ex.Z50 Dシリーズ(レフ機)ex.D7500 |
1/2.3型 | COOLPIXシリーズ(コンデジ)ex.P950 |
Sony
系譜 | |
フルサイズ | αシリーズ(ミラーレス機)ex.α1 ZVシリーズ(ミラーレス機)ex.ZV-E1 RXシリーズ(コンデジ)ex.RX1RII |
APS-C | αシリーズ(ミラーレス機)ex.α6600 ZVシリーズ(ミラーレス機)ex.ZV-E10 |
1.0型 | RXシリーズ(コンデジ)ex.RX100VII |
Fujifilm
Panasonic:Lumix
系譜 | |
フルサイズ | Sシリーズ(ミラーレス機)ex.DC-S1R |
マイクロフォーサーズ | Gシリーズ(ミラーレス機)ex.GH6 LXシリーズ(プレミアムコンデジ)ex.DC-LX100M2 |
1.0型 | TXシリーズ(プレミアムコンデジ)ex.DC-TX2D DC-FZシリーズ(フィールドズームコンデジ)ex.DC-FZ1000M2 |
1/2.3型 | TZシリーズ(高倍率ズームコンデジ)ex.DC-TZ95 DMC-FZシリーズ(フィールドズームコンデジ)ex.DMC-FZ300 |
RICOH:PENTAX
系譜(全て同一ページに記載あり) | |
フルサイズ | Kシリーズ(レフ機)ex.K-1 Mark II |
APS-C | Kシリーズ(レフ機)ex.K-3 Mark III GRシリーズ(コンデジ)ex.GR IIIx |
1/2.3型 | WGシリーズ(コンデジ)ex.WG-70 |
※PENATXにはミラーレス機が一機種のみ存在するようですがここでは省かせてもらいました。
Olympus
おすすめのカメラ
基本的にどのメーカーを選べばよくわからないという方は、コンスタントに新製品を出しているCanon,Sony,Nikonあたりを購入するのが無難です。
ここからは完全に独断と偏見でのおすすめカメラですので、こんなカメラあるんだくらいの参考程度に見てください。
ZV-E1
フルサイズでありながら1200万画素しかないため、毛嫌いする方もいると思いますが、SNSで写真を使う分にはそこまで気にならないレベルの画素数。写真だけでなく、動画も気になっているという方にはぜひおすすめしたい一台。
余談ですが、SonyのレンズはSony以外のメーカーも作っている数が多いので、純正の一眼カメラのレンズは高価で手が出にくいものでもコスパ良く手に入るのでおすすめという側面があります。
最初の一台におすすめのカメラはこちらの記事にて紹介しているのでぜひご覧ください。
RICOH GRIII
コンデジでありながら、APS-Cサイズのセンサーを搭載し、拡張性にも優れたカメラ。
過去にレビューもしていますが、写りも一眼カメラに負けないもので、手ぶれ補正も十分です。もしコンパクトさとスマホと違った写りを追求したい方におすすめしたい一台です。
これら以外にもカメラを知りたい方は別記事でコンデジ特集をしているのでこちらの記事をどうぞ。
最後に伝えたいこと : 悩んだらとりあえずフルサイズ
結局自分に合っているセンサーサイズはなんだろうと分からなかった方は、予算があればフルサイズにしてください。
というのも、基本的に多くのカメラメーカーはフルサイズを主戦場としています。その分どのメーカーもラインナップはそれぞれ細かな選択肢を提示してくれていますし、フルサイズであればボケ感やスマホよりも圧倒的な夜間の写真性能が保証されています。
もし、小さなセンサーサイズのカメラを購入してから写りの面で不満が出た場合、買い替えコストがかなり嵩みます。それを考慮するとある程度売価が保証されているフルサイズの方が、損失も結果的に少なくなりますし、売価の分でセンサーサイズを小さくしたカメラを買うこともできるでしょう。
以上で終わりです。最後まで読んで頂きありがとうございました!