センスの良い、優れた写真とはどんな要素を持った写真?|構図編

2023,08/23

写真をもっと上手に撮れるようになりたい。カメラを始めるとこんなふうに思うことがありますよね。もし、自分が写真を撮りたいと思った感情を効果的に写真に反映できれば写真がより楽しくなっていきます。

そこで今回は、ナショナルジオグラフィックの本を参考にして良い写真・優れた写真が持つ要素、今回は特に構図について作例を使いつつ深掘りして解説していきます。

写真の高みを目指したい人必見の内容です。

この記事で学べること
工藤瑛志
・優れた写真の定義

・写真に込めた思いを伝える技術
・横構図と縦構図の使い分け方

センスは生まれ持った才能か?

センスの良い写真(以下、優れた写真)とは何かと問われたとき、あなたはどう考えますか。

素晴らしいロケーションで撮影した美しい写真、上手な構図で被写体の良さを引き出した写真、など考えれば人それぞれの正解があると思います。

上記のように良い写真とは人それぞれで主観的で、写真を撮る人・見る人が培ってきた美的センスに多少なりとも左右されます。とはいえ、人の美的感覚(趣味判断や共通感覚)は少しの違いはあれど、似たり寄ったりだと私は思っています。

なので、一般的に優れていると言われる写真について技術などを学ぶことで、誰でも優れた写真を生み出すことが可能だと私は思っています。

優れた写真ってどんな写真?

「優れた写真かどうかは、まず撮影者がどのような意図で撮影し、その意図が作品にどう反映されているかという点を考慮して判断すべきだろう。」

ナショナルジオグラフィック「プロの撮り方 構図の法則」6頁

わかるけど難しいですよね。具体的にどうすればいいんだとツッコミを入れたくなります。

そこで、もう少し深掘りして優れた写真に必要なものとして以下の4つを挙げています。

優れた写真に必要な要素

  • インパクトのある被写体
  • 一つ、または複数の理由で、見る人の心を強くとらえるもの。理由としては、美しさ、醜悪さ、個性、興味深さなど、いろいろな要素が考えられる。

  • ダイナミックな構図
  • 力強い構図は、微写体の特性を強調したり、被写体にまつわる物語を伝えたりするのに役立つ。もし見る人が「心地よい」と感じる写真にしたければ、構図も目に心地よく、バランスのとれたデザインにしなければならない。

  • 効果的な光
  • 光を上手に使うと、伝えたいメッセージかわかりやすくなる。さらに光の質と画面全体におけるバランス次第で、見る人が喜びを感じられる写真になる。

  • 感情的な反応を引き起こすカ
  • 上記の1~3をまとめただけではないかとの指摘を恐れず言えば、この要菜はおそらく最も重要だ。作品を見た人はその力によって心をださぶられる。感情や雰囲気、あるいは場所や位置、空間を、あたかも自分が実際にその場にいるように感じ取ることができるだろう。

これらがあると「優れた写真」というわけです。技術的にかなり高度な内容ですが、押さえるべき要点が徐々に明確化してきましたね。

これらの要素を全て深掘りするとやるべきことは沢山ありますが、今回はなるべくシンプルにするために今回は「構図」に絞って解説していきます。

構図がなぜ重要なのか

構図というのはある程度パターンがあるものです。なので比較的簡単に覚えて使うことができます。

もし、初心者の頃に上達するために何をすればいいかと聞かれたら私は迷わず「構図を意識して!」という風にお応えするでしょう。

また、講座はある意味で写真における「言語」に相当するものだと私は思っているため構図を覚えることで自分が伝えたい事柄を読み手に伝えやすくすることが可能です。

私たちは作品を通して、被写体に関する何かを伝えたいと願う。しばしば、風景や夜写体の美しさをとらえて表現したり、身の回りの何かに対して感じたことを伝えようとする。しかし私たちが写真を撮るきっかけとなった思いや構想を、シャッターを押すだけでカメラが勝手に表現してくれるわけがない。そうしたものは、撮影者が構図を工夫することで初めて明確に表現できるのだ。

ナショナルジオグラフィック「プロの撮り方 構図の法則」8頁

このように見る人に自分の見せたい事柄がしっかり伝わること・被写体の良さを最大限引き出すことができている写真が優れた写真であると述べています。

以上、センスの良い写真・優れた写真に構図が非常に重要な役割があることを理解して頂けたと思います。

これらを踏まえた上で、より構図について深く考えていきましょう。

人の視覚認知メカニズムと構図の関係

私たちが目で物を見るとき、無意識にもそこにはクセのようなものが存在します。

例えば、目は明るい光によく反応するなどです。

人間の目の場合、明るい光の刺激に反応する受容器の大部分が網膜の中央部に集申しているため、周縁部に向かうほど解像度と鮮明さが低下する。 実際、視野の中心から10°ずれただけで、これらの値は中央部の5分の1にまで落ち込む。周辺部では鮮明に見えない分、私たちの目は能動的に動き、くまなく対象を精査して多くの情報を集めなければならない。

ナショナルジオグラフィック「プロの撮り方 構図の法則」15頁

また、視線誘導の典型例では、視線は左上から始まり、Z字形やF字形といったパターンで画面をたどります。(もちろんN字型などもあります)

これらの事前知識を踏まえて、次に行きましょう。

ネガティブスペースに意味を与える

ネガティブスペースというのは、いわゆる背景ともいわれる部分のことで、主題(ポジティブスペース)以外の部分を指します。

これらのバランスは非常に重要で、ネガティブスペースに意図がない場合、空間に余白がない場合見る人に窮屈さを与えたり、逆に余白が多い場合無駄なスペースだと印象を与えます。

しかし、効果的に使うことができれば、ポジティブスペースと相乗効果を生み出し、被写体の魅力をより引き出すことが可能になります。

ネガティブスペース写真の最も重要な点は、見る人にどのような印象を与えるかということです。何もない空間に囲まれた被写体の人物は、周りの雰囲気との関係性を表しています。ほとんどの場合、被写体よりそれを取り囲む空間の方が当然かつ比喩的にもより大きな広がりを持っています。ポジティブスペースとネガティブスペースが、互いに関連しあって魅力的な効果を生み出します。

Adobe 「ネガティブスペースの効果的な使い方」

反復とリズム、写真に動きを与える

形や色の反復は見る人に心地よい印象を与える場合が多いです。

有名なスポットでもこの法則が当てはまる場所がいくつかあります。

作例として戸隠神社の写真。杉並木の色のリズムとその中に人工的な発色の良い黄色があり、コントラストが引き立ちます。(赤や青ならなお良し)

奈良井宿の写真。歴史的な建築群がSカーブの道路脇に並びその先にもずっと続く様子は圧巻。奥の松の木も構図全体のバランスを整えてくれています。

視線の動きを誘導する

例え話でも挙げたように、人間の目は明るい光に敏感に反応したり、ZやF字型に動きます。

これらの癖を理解することでより、自分の最も関心を向けて欲しい対象へと誘導することが可能です。

写真を見る人の視線は画面の下から上へと移動していく傾向がある。これはおそらく私たちが画面の下にあるものを「そばにある」要素と記載するからだろう。人は、自分の近くにあるものを真っ先に見分けようとする。以上の理由から、風景写真では鍵となる要素を右上の方に配置するのが効果的な場合が多い。そうすれば、見る人の視線が画面の大部分をたどったあとに、最も関心を向けてほしい対象へと到達する。関心をできるだけ長い間、作品にとどめておけるというわけだ。また、満足感が最大となる瞬間を引き延ばすことにもなるだろう。

ナショナルジオグラフィック「プロの撮り方 構図の法則」36-37頁

この写真は下部の部分的に減光があるか否かの違いがあるだけですが、右の写真の方がより明るい中心部へと自然と視線が誘導されますよね。

重曹的に色を変化させていくのも効果的です。特に下から上へ視線が誘導できた場合、このようなロケーションであれば桜→アルプスと日本の風景の雄大さを存分に伝えることが可能です。

補足 : 縦構図か横構図をどんな基準で選ぶのか

縦位置か横位置かの選択は被写体の魅力をよく引き出す選択をする必要があります。

どちらがふさわしいか選ぶときには、以下の質問を自分に問いかけてみよう。

  • そもそも被写体自体の形状は、縦長か横長か?
  • 余計なものが画面に入らない構図はどちらか?
  • 前景に、伝えたいメッセージを後押ししてくれる要素はあるか?
  • 広がりと奥行きのどちらを伝えたいか?
  • 強調したい要素間の関係はあるか?
  • 見る人の視線をたどらせたいルートがあるか? あるいは、視線を引きつけたい、連続した要素があるか?
  • 目の前の光景の中に、構図を積極的に引き立ててくれる線や形があるか?

引用 : ナショナルジオグラフィック「プロの撮り方 構図の法則」61頁

横構図は広がりを、縦構図は奥行きの表現に最適です。ですが、選択が面倒であれば両方撮影するのがベストです。写真の見え方がかなり変わることが多いですから。

私の場合はSNSや印刷用に対応しやすくするために両方撮影する場合がほとんどです。

最後に伝えたいこと : センスは理論から

「センスは理論から」はこの本の帯の言葉です。センスは生まれつきのような言葉も目にしますが、写真においては理論武装して、現地で自分なりにアレンジ・活用できるかが鍵だと僕は考えています。

構図は自分の感じたメッセージを写真に落とし込むための技術です。

写真が上達せず悩んでいる人はひとまず知識を誰にも負けないくらい身につけてみるのもいいかもしれません。

以上で終わりです。最後まで読んで頂きありがとうございました!

※作例はなるべく客観的に優れているだろうという、Instagramにていいねや保存をたくさん頂いたものやメーカー公式SNSにてご紹介頂いたものを選択しています。

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