SNSで何でも知れる時代。しかし、その情報の確からしさを判断したり、新たな学びを得るためには相応の時間がかかります。この点本は多くの人が校閲を重ね出版されるものです。時によってはその値段以上の情報の価値を提供してくれます。
そこで今回は、私が読んでいいなと感じた本をなるべく偏り過ぎない意見を添えて紹介していきます。
写真関連の本選びに悩んでいる人必見の内容です。
この記事で学べること・読みやすさ(作例の多さなど)
・本の概要と価格
【レベル別】絶対見てほしい!写真に関するおすすめ本
ここで紹介するのは、「知識習得」のための本。いわゆるハウツー系の本です。
レベルは初心者から上級者までで、記載された知識の概要もご紹介します。
カメラの知識がほぼゼロ。具体的にはカメラの選び方やシャッタースピード等が分からない人
-
・中級者とは
カメラの基礎的な知識が身についた状態。具体的にはF値が画質に影響すること等の踏み込んだことを知っている人
-
・上級者とは
撮影設定を意識せずに写真を撮れる状態。具体的には構図や視線誘導の仕方等の表現方法に意識を持っていける人
初心者におすすめ
説明の丁寧さ 読みやすさ 情報のコスパ 素材の質感
写真のことが全部わかる本 センス&知識ゼロからの写真のはじめかた、教えます。
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2018.3/21 | ¥1,600 |
・カメラ、写真に必要な知識が網羅されている
物事を上達するうえで必要なことは知識。全く未知のジャンルだと、言葉すら分からないことがありますよね。これでは検索して理解を深めることもできません。
そこで、この本は初心者から上級者までで必要になる知識が網羅的に紹介されています。具体的に言えば、目次からも分かりますが、カメラの選び方・設定・撮り方・現像・周辺機材までカバーされています。
比較画像も多様に使われており、文字情報だけでは伝わらないカメラの特性を分かりやすく解説してくれています。
ここで得た知識に、SNSや書籍、自分の体験で幹に枝葉を付ければみるみる上達するでしょう。
1.表記の仕方に語弊を生じさせる
2.情報が詰まりすぎている(ターゲティングが曖昧)
まず、「1.表記の仕方に語弊を生じさせる」がどういうことかというと、初級・中級・上級という表示が最たるものです。
この本はあくまでも初心者向けです。その中でのランク付けであり、情報が嚙み砕かれているため、細かなカメラの原理などが解説されているわけではないです。例えば、F値はボケだけに関係するものではなく、絞るほど画質が劣化します。
このF値の細かな話はこちらの記事を参照してもらいたいのですが、本の中では「最も小さいF値(開放F値)かF11にするのがおすすめ」のような知識だけでWhatの部分が解説されていません。
ここで「2.情報が詰まりすぎている(ターゲティングが曖昧)」という話に繋がりますが、1ページ当たりの情報量が多く、少し読むのが大変です。お写真はとても上手で説明が分かりやすいだけに、ここでもっと深掘りがあれば良いなというところに解説がなく、難易度が急に高くなった情報が記載されていたりと情報のレベル感にバラつきがある印象。
紙媒体なので限界があるので仕方ない部分ではありますが...
ただ、1000円台でこの情報量がまとまっているのは、調べる労力を考えれば超リーズナブルな価格であるため、迷ったら買うべき1冊。
カメラはじめます!
説明の丁寧さ 読みやすさ 情報のコスパ 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2018.1/20 | ¥1,200 |
・共感しながら問題を解決できる
カメラ・写真を上達することで最も必要なことはカメラや写真を楽しむこと。しかし、用語等が初心者には難しく感じるだけに最初が肝心で、始めに苦手意識を持たせないことが伝え手には必要だと思います。
この本はそこのところが非常に上手く構成されていて、生徒&先生&取り巻きのマンガでストーリーが進行していきます。
「理由は分からないけど、イメージと違う写真になる」という初心者にありがちな写真の漠然とした悩みを先生が具体的に撮り方・設定などを解説してくれるので、初心者の人も同じ場所で躓いたときに非常に親近感をもって読んでいける内容になっています。
・作例が限定的
情報を最小限に絞って初心者に寄り添った本。しかし、都内近辺で撮影された写真が多いように感じるため、作例は都市風景・花・人物・食事といったものが多め。
本を手にとってくれる人が撮りたいものは三者三様であるため、本書は女性著者ということもあり、風景・鉄道といった比較的男性の割合が多いような被写体の解説はほぼ無いため女性向けの本であると感じた。
もちろん、撮影場所が都会のことが多い方にはおすすめしたい1冊。
中級者におすすめ
あの人が自分らしい写真を撮れる理由
説明の丁寧さ 読みやすさ 情報のコスパ 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2022.6/21 | ¥1,800 |
・マインド部分を唯一本にしてくれた
ある程度写真に慣れ始め、とにかくボケが楽しかった頃が終わる。
こんな時多くの人が経験する、自分の写真に対する不満や自信を無くす時期。一種のスランプ的な状態になったときに見て欲しい一冊。
多くの写真関連の本はノウハウが解説されているものが大多数です。しかし、この本は著者の考えが書かれていて、「自分らしさの出し方」や「センスに自信を持つには」といった答えのない抽象的な問いに対してひとつの答えや解決方法を紹介しています。
かくいう私も"自分らしさ"に悩んでいたときこの本に出会い、その答えを見つけました。自力で答えを出すことも可能ですが先人の知恵を借りることもまた新たな知見を広げるいい機会になるでしょう。
・デザイン的な余白が多い
写真は大きく掲載されていて美しく、文章も話しかけるような語りなので読みやすいです。
ただ、写真の解説を小さく入れるためのスペース分が大きめに確保されているため、その余白を少し詰めて空いたページに素敵な写真をもっと掲載して欲しかったなと感じました。
正直、惜しいポイントとしてすぐに思いつくのはこれぐらいかなと思います
名画から学ぶ写真の見方・撮り方
説明の丁寧さ 読みやすさ 情報のコスパ 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2022.10/31 | ¥1,800 |
・トータルのバランスが非常にとれている
東京カメラ部に投稿された綺麗な写真たちと洋画・邦画が豊富に使われている。名画から知識を学ぶ→写真を見るという順番で紹介されているため、「なぜその写真が良いのか」という部分を論理的に解説してくれている1冊。
構図に関しては知識・実践という観点で見ればこの1冊を買ってしまえば完璧なのでは?という情報量です。被写体もバランス良く用意されているため、どのジャンルの方にもお勧めできる一冊。
・完成された写真が多い
難癖のような話ですが、作例が構図や色味がSNSでバズりやすいような作例が多いです。
東京カメラ部ですから当たり前ですが、いわゆる「SNS映え」するような写真が苦手だと思う方は、上級編で紹介する「ナショナルジオグラフィック」の本をおすすめします。
ただ食わず嫌いせずSNSで目にする美しい絵画のような写真も好き!という方にはぜひ手に取ってもらいたい一冊。
上級者におすすめ
北斎のデザイン
説明の丁寧さ 読みやすさ 情報のコスパ 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2021.3/24 | ¥2,000 |
・世界で評価される葛飾北斎の作品を理論で理解する試み
一見すると写真には関係ないような浮世絵の話。しかし、目次【第4章 カメラ・アイ】からも分かるように共通点が多いです。
「甲州石班沢」を見る我々の視線は霞に溶け込む富士ではなく、波が激しく打ち寄せる岩の上の漁師と子供へ向けられます。写真に例えれば、焦点を手前に絞ると背景がぼけ、狙う夜写体以外を切り捨てる、被写界深度が浅く狭い画角の望遠レンズを使った表現です。そして最初に述べた波と漁夫が頂点となる三角に我々の焦点が絞られます。 北斎は情報満載の絵も得意ですが(第4章3節参照)、「甲州石班沢」は狙いを定め、対象を絞り、意図的に引き算の発想で魅力を際立たせたことがあらためて分かります。当時の写真技術は開発途上ですから、望遠鏡を引いて経験した、裸眼とは違うレンズの特性にヒントを得て目的に合わせ用いたのでしょう。写真は先に発展した絵画の構図法を吸収し独自の表現領域に進みましたが、表現ソフトや知識があふれる現代は、技術や知識以前の創造する姿勢に北斎から学ぶことがありそうです。 (145頁)
特に北斎は構図や色使い、発想が優れていて、特に構図は写真においては非常に重要な役割を担っています。
世界中で作品が評価される理由を"感覚"ではなく言語化することで、著者の解釈を超えて自分なりの理解を深めることは、自分の作品に対して新たな風を吹き込むことに繋がります。
・構図理解が難しい
こればかりは実際に本を手に取ってもらわなければ伝わらないことですが、構図の補助線が沢山引かれています。
私の理解力不足だとは思いますがすべてのページで理解が大変です。読み終わる前に寝落ちしてしまいます。ただ、先に述べたように北斎のデザイン的な要素から新しい発見をすることができれば自分の中にインスピレーションを得ることができると思います。
ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 構図の法則
説明の丁寧さ 読みやすさ 情報のコスパ 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2017.3/20 | ¥2,800 |
・プロの思考を知れる
ナショナルジオグラフィックといえば、一回くらいは名前を聞いたことがあると思います。そこで活動する彼らの思考法をたった数千円で知れるとはなんていい時代。
内容は構図に絞って徹底解説されています。この点は、「名画から学ぶ写真の見方・撮り方」と似ていますがこちらの方はより理論派。ただ、全体的に作例が大きく補助解説もたくさんあるので、用語の理解等で苦しむことは少ないです。
カメラの理解を超え、人の視覚認知のメカニズムから逆算した構図設計。受けてに対して自分のメッセージを伝えることを考え抜いている人たちの言葉は重く、学ぶことが多すぎて今まで読んだ本の中でも1,2を争うくらい興奮しました。
構図の重要性を語る一説を引用。
写真撮影とは、作品を通して、彼写体についてだけでなく自分自身について他者に伝えるための一手段である。あなたの人生で何かほかに追求していることがあれば、きっと次のような共通点があるはずだ。それは、自我が大きな声で「私に気付いて!」と強く呼びかける行為である。イギリスで最も有名な風景写真家の一人デイビッド・ワードもこう言っている。「結局のところ、写真に何が写っているかよりも、それを自分がどう見たかを知ってもらえるほうがうれしいですよね?」 後でも述べるが、思い通りの写真を撮れるようになるための大切な第一歩はここにある。自分のためだけでなく、作品を見てくれる人にインパクトや影響を与えるために写真を撮っているのだと、自らしっかりと認めることだ。 私たちは作品を通して、写体に関する何かを伝えたいと願う。しばしば、風景や袚写体の美しさをとらえて表現したり、身の回りの何かに対して感じたことを伝えようとする。しかし私たちが写真を撮るきっかけとなった思いや構想を、シャッターを押すだけでカメラが勝手に表現してくれるわけがない。そうしたものは、撮影者が構図を工夫することで初めて明確に表現できるのだ。(8頁)
ナショジオだから作例は風景・動物が9割
風景や動物の写真を撮影しない人には少し応用が難しいかもしれないです。
もちろん内容はこの価格で公開していいのか疑うレベルですが、プロの撮り方というだけあって難しいです。自分で抽象化して応用できる方には有益ですが、あなたの撮るジャンルが風景・動物以外だと少し微妙かもしれません。
他にもテーマの異なる本もありますが、読んだことがないのでまたの機会に。
正直完璧です。なにか発見したら更新します。
おすすめ写真集
簡単に私が買って良かったと感じた写真集の概要といい所を紹介していきます。
地元写真家がいちばん見せたい にっぽんの絶景
写真の加工具合 価格に対するボリューム 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2022.1/25 | ¥2,700 |
全国の写真家たちの写真が集まった作品集。みんなの推しの地元が切り取られている。
写真が非常に大きく印刷されており、場所の詳細な知識も下部に記載されている。また、撮影日・撮影時刻・撮影者のSNSアカウントが乗っているため、好きな作品を見つけSNSでフォローすることができます。
税抜き2700円なのに、全部で285ページあり写真も美麗であるためボーっと眺めてしまう1冊。
1枚撮りが多いような印象で、加工も自然な感じなのでSNSでの過度なレタッチが嫌いな人は好きかもしれない。
ソール・ライターのすべて
写真の加工具合 価格に対するボリューム 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2017,5/15 | ¥2,500 |
ソール・ライターはアメリカ合衆国の写真家・画家。 1940年代と1950年代の初期作品は、のちに「“ニューヨーク派”写真」 と認識されるものに重要な貢献をした人物。(引用 : Wikipedia)
昨今のSNS映えを狙ったような写真とは対極にあるような写真たち。彼の身近な言葉とモノクロやビビットな写真が紡ぐ不思議な写真集となっています。
デザイン的にも優れていてインテリアとしても飾っておきたいくらい。縦写真が多く、含蓄のある言葉が添えられているため、なんだか哲学書のようにも思えてくる1冊。300頁近くあるのでボリューム満点。
正直、良さが完璧に分かるかと言えばNoです。
ただ、どこか琴線に触れるような不思議な魅力を持った写真たちで、人気を博していたこともあり買ってみました。生き様が面白く、写真と彼の思想を併せて楽しむのがベストな珍しいタイプの書籍だと思い紹介しました。
ソール・ライターに関する本はたくさんあります
The North Wods(ノースウッズ) 生命を与える大地
写真の加工具合 価格に対するボリューム 素材の質感
初版発行日 | 定価(税抜き) |
2020.2/22 | ¥2,500 |
太古から人と自然の物語が紡がれてきた世界最大級の原生林、ノースウッズ。そこで旅をする一人の写真家、大竹英洋が見た景色。
ひたすらに圧倒される写真ばかり。写真に細かなエピソードや状況説明が付記されているため、撮影意図がわかりやすいです。あまり価格の話をするのは無粋であるが、2750円でこの縦横24cm正方形のサイズ感と200頁ほどのボリューム、写真のクオリティーは破格であると感じる1冊。
日本にいればまず見ることはできないであろう風景や命の躍動を感じることができる。今すぐにでも遠くに写真を撮りに行きたくなる力を貰える写真集である。
機会があれば詳しく紹介したい本
私がまだ読めていなけど、書店で見てこれはいいな!と思った本もせっかくの機会ですし掲載しておきます。
初心者向け
中級者向け
上級者向け
まとめ : まだまだ本でしか手に入らない情報がある
今回紹介できた本はごく一部。まだまだ未知の書籍が沢山あるはずです。
ご自身でも探してみたり、「北斎のデザイン」のように写真以外のジャンルで写真に応用できる内容の情報は計り知れないほどあるのでぜひ知見を広げるためにも本にたくさん触れてみてくださいね。
以上で終わりです。最後まで読んで頂きありがとうございました!