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【ナショジオから学ぶ】優れた写真とはいったいどんな写真か

2023,01/30

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【ナショジオから学ぶ】優れた写真とはいったいどんな写真か

2023,01/30

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写真では上手い人・下手な人の違いについて気にされる方が多いと思います。優れた写真・上手な写真を撮りたいと思ってもどうすればいいかわからない、なんてこともあると思います。

そこで今回は、ナショナルジオグラフィックの「プロの撮り方 構図の法則」を参考にこれらについて考えていきたいと思います。

上達したい人必見の内容です。

この記事で学べること
工藤瑛志
・良い写真・優れた写真とは

・優れた写真を生み出すための知識
・人の視線のクセ

優れた写真とはいったい何か

優れた写真・良い写真とは何かと問われたとき、あなたはどう考えますか。

構図、照明、色、被写体などの要素を考えるかもしれません。それとも、適切なシャッタースピードなどの技術的な選択について考えるかもしれません。

しかし、お分かりのように最終的に良い写真とは主観的であり、見る人の好みや経験に左右されます。他方、人の美的感覚は似たり寄ったりなので優れていると言われる写真(構図・光)について学ぶことで優れた写真を生み出すことが可能だと私は思っています。

「優れた写真かどうかは、まず撮影者がどのような意図で撮影し、その意図が作品にどう反映されているかという点を考慮して判断すべきだろう。」

本書6頁

優れた写真に必要なものは?

ナショナルジオグラフィックの本では優れた写真に必要なものとして以下の4つを挙げています。

ココがポイント

1.インパクトのある被写体
一つ、または複数の理由で、見る人の心を強くとらえるもの。理由としては、美しさ、醜悪さ、個性、興味深さなど、いろいろな要素が考えられる。

2.ダイナミックな構図
力強い構図は、微写体の特性を強調したり、被写体にまつわる物語を伝えたりするのに役立つ。もし見る人が「心地よい」と感じる写真にしたければ、構図も目に心地よく、バランスのとれたデザインにしなければならない。

3.効果的な光
光を上手に使うと、伝えたいメッセージかわかりやすくなる。さらに光の質と画面全体におけるバランス次第で、見る人が喜びを感じられる写真になる。

4.感情的な反応を引き起こすカ
上記の1~3をまとめただけではないかとの指摘を恐れず言えば、この要菜はおそらく最も重要だ。作品を見た人はその力によって心をださぶられる。感情や雰囲気、あるいは場所や位置、空間を、あたかも自分が実際にその場にいるように感じ取ることができるだろう。

 「写真撮影とは、作品を通して、被写体についてだけでなく自分自身について他者に伝えるための一手段である。
・・・自分のためだけでなく、作品を見てくれる人にインパクトや影響を与えるために写真を撮っているのだと、自らしっかりと認めることだ。」(8頁)

 「私たちは作品を通して、被写体に関する何かを伝えたいと願う。しばしば、風景や夜写体の美しさをとらえて表現したり、身の回りの何かに対して感じたことを伝えようとする。しかし私たちが写真を撮るきっかけとなった思いや構想を、シャッターを押すだけでカメラが勝手に表現してくれるわけがない。そうしたものは、撮影者が構図を工夫することで初めて明確に表現できるのだ。」(8頁)

このようにこの本では見る人に自分の見せたい事柄がしっかり伝わること・被写体の良さを最大限引き出すことができている写真が優れた写真であると述べています。

これらを踏まえた上で、構図について考えていきましょう。

人の視覚認知メカニズムから考えるメッセージの表現方法

私たちが目で物を見るときそこにはクセのようなものが存在します。

「周囲を見回したとき、あるいは1枚の写真を見たとき、人は目で見た情報をどのように知覚するのだろうか。視覚情報は、実は多様なプロセスを経て処理され、認識される。まずは、その基本的なメカニズムを学んでいこう。構図の法則を理解するうえで、重要な基盤となるはずだ。
「見る」ことは、対象に反射した光が目に入るところから始まる。光は水晶体などレンズに相当する部分によって収束し、網膜上に反転した像を結
ぶ。そのメカニズムはカメラとよく似ている。カメラでは、イメージセンサーやフィルムに光が収束されて、披写体の姿と同様の像を結ぶ。しかし人間の目の場合、明るい光の刺激に反応する受容器の大部分が網膜の中央部に集申しているため、周縁部に向かうほど解像度と鮮明さが低下する。
実際、視野の中心から10°ずれただけで、これらの値は中央部の5分の1にまで落ち込む。周辺部では鮮明に見えない分、私たちの目は能動的に動き、くまなく対象を精査して多くの情報を集めなければならない。」(15頁)

こんな感じで。

ネガティブスペースに意味を持たせる

ネガティブスペースとはいわゆる背景ともいわれる部分のことで、主題(ポジティブスペース)以外の部分です。

これらのバランスは非常に重要で、ネガティブスペースが少ないと見る人に窮屈さを与えたり、多いと無駄なスペースだと印象を与えます

どちらも同じ写真ですが、ネガティブスペースを配分を変えるだけで印象が全く変わり、檻の窮屈さが2枚目の方が一層伝わりやすいと思います。

トリミングをしない人も多いかもしれませんが、カメラ側の撮影したアスペクト比は基本固定になるので、自分のメッセージを明確化するためにも、トリミングを有効活用していきましょう。

反復とリズムを活用する

形や色の反復は見る人に心地よい印象を与える場合が多いです。有名なスポットでもこの法則が当てはまる場所がいくつかあります。

この写真は戸隠神社の写真。杉並木がずっと続く様子はどこか安心する気がします。

この写真は奈良井宿の写真。ここも建物が似たような造形であり、先にもずっと続く。

この法則は、逆に反復・リズムの中に異なる要素を配置する、たとえば緑豊かな森の中に赤い物があったら目立ちますよね。そのようにして主題を引き立たせることもできます。

縦構図・横構図どちらで撮るかをどんな基準で選択するか

写真をSNSに投稿する場合、アスペクト比はそのプラットフォームに依存します。しかし、ある程度の自由は効きますし、印刷等の場合にはあまり関係ありません。

そうすると縦位置か横位置かの選択は被写体の魅力をよく引き出す選択をする必要があります。そこで、縦・横構図の基本的な印象の違いについて抑えておきましょう。

「横長のフレームでとらえた景色は、私たちが肉眼で見た世界に近く自然な印象になる。
人間の目は、横に広がった視野で世界を見ているからだ。もちろん、人の視界を限定するようなフレームがあるわけではないし、人が景色を見るときは、ある特定の部分に注目してから、視線を動かしてほかの細部を見渡していく。ただ、頭を
動かさなければ、人間の視界はやはり横長で、周辺がぼけた橋円形になる。」(61頁)

つまり、横構図は広がりを、縦構図は奥行きの表現に最適です。

さらに詳しく



横位置と縦位置、どちらがふさわしいか選ぶときには、以下の質問を自分に問いかけてみよう。
・そもそも被写体自体の形状は、縦長か横長か?
・余計なものが画面に入らない構図はどちらか?
・前景に、伝えたいメッセージを後押ししてくれる要素はあるか?
・広がりと奥行きのどちらを伝えたいか?
・強調したい要素間の関係はあるか?
・見る人の視線をたどらせたいルートがあるか? あるいは、視線を引きつけたい、連続した要素があるか?
・目の前の光景の中に、構図を積極的に引き立ててくれる線や形があるか?
(61頁)

見る人の視線を考え、導く

「優れた写真を撮るには、作品を見る人の視線が画面の中でどう移動していく可能性が高いかを、よく考えなければいけないということ。たとえば、私のように英語圏で暮らす人たちは、画面の右に置かれた.写体を、より長い時間、見る傾向がある。ふだんから2次元で文章を読んだりするとき、左から右へと読み進めていくのに慣れている人が大半だからだ(アラビア語圏などでは事情が変わってくるかもしれない。
また、写真を見る人の視線は画面の下から上へと移動していく傾向がある。これはおそらく私たちが画面の下にあるものを「そばにある」要素と記載するからだろう。人は、自分の近くにあるものを真っ先に見分けようとする。以上の理由から、風景写真では鍵となる要素を右上の方に配置するのが効果的な場合が多い。そうすれば、見る人の視線が画面の大部分をたどったあとに、最も関心を向けてほしい対象へと到達する。関心をできるだけ長い間、作品にとどめておけるというわけだ。また、満足感が最大となる瞬間を引き延ばすことにもなるだろう。」(36-37頁)

この指摘にように人には優位感覚などのより反応しやすい脳の癖があります。また、明るいところの方が目が行きやすかったり、色がより濃いとこの方が目が行きやすいなども。

この写真は下部の減光に違いがあるだけですが、右の写真の方が建物に自然と目が移動しやすいですよね。

まとめ : センスは理論から

いかがでしたでしょうか。

「センスは理論から」はこの本の帯の言葉です。センスは生まれつきのような言葉も目にしますが写真においては如何に理論武装して、自分なりにアレンジ・活用できるかが鍵だと僕は考えています。それをこの本を見て感じました。

自分の感じたメッセージを写真に落とし込むための技術です。写真が上達せず悩んでいる人はひとまず知識を誰にも負けないくらい身につけてみるのもいいかもしれません。

本書を網羅して紹介すると引用の範囲を超えてしまうため、かなり部分的に解説しました。今回紹介した考え方や理論などはごく一部でしたが、学ぶことが沢山ありましたね。

以上で終わりです。最後まで読んで頂きありがとうございました!

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